弁護士千葉博コラム

4 限界を突破する勉強法

■ あせりで自分を空回りさせない

 試験を受ける、というと、気合いが入りすぎて、何でもかんでも完璧にやろうとする人がいます。

 いろいろと情報収集をするのはいいのですが、
「この本がいいよ。」といった話を聞くと、全てそろえて、全部やろうとするのです。

 どうしてそれを全部やろうとするのか。

 どうして必要なものに絞り込みができないのか。

 突き詰めて自分の気持ちと向き合っていると、ただ安心感を得たいというだけだったりします。これだけやれば安心だ、逆に言えば、全部やっておかないと不安だ。

 でも。

 このような状況に陥ってしまうと、客観的にある時間に比してやるべきことが膨大になってしまい、収拾がつかなくなってしまいます。一生懸命やっているのに、今日のノルマがこなせない。日はどんどん過ぎていく。日を追って、試験本番までに、自分のやろうとしている課題ができないことがはっきりしてくる・・・。

 こうなってくると、心の底からたまらない焦燥感が生まれてきます。焦りです。そうなると、目は本の上の活字を追っていても、結局頭を素通りしていくだけで、何も残らない、という最悪の状態になってしまいます。

 最悪の、というのは、いくら時間をかけても成果がゼロに近くなってしまうからです。試験直前の3ヶ月が、いくら時間をかけて勉強しても、成果は何もなし、ということになってしまうのです。

 どうしてこうなってしまうのか。

 それは、あまりにも過大な目標設定をしてしまったがために、自分にまだできていない大半の部分に意識がいってしまい、そこから離れることができなくなってしまっているからです。

 このような場合の対応策の一つには、前に書いた目の前のことに集中するための工夫というのもあるでしょう。でも、この場合には根本的な解決にはなりません。目の前のことに目を向けるというのは、ただ終わっていいない山のような課題から目をそらして、逃げているに過ぎないからです。いくら目の前のことに集中しても、そのほかの課題が解消されていくわけではなく、状況は変わりません。

 こういった場合は、結局、計画自体を変えるしかありません。本当にそれはしなければならないのか?ただ、やらないのが不安だから、やることリストに加えているだけではないのか?

 試験本番までの期間を見据えながら、客観的に与えられている時間でこなせるだけの分量にやるべきことを集中させるのです。一般的にいっても、多くの本をただ一通りやりました、というよりも、同じ本を何度もやりました、という方が力がつくということもあります。

 逆に不安になるくらい、最低限のことにやることを絞るのです。結果的に時間が余ったら、追加で何かやることを加えればいいのですから。

■ 友達の活用

 受験生の皆さんからは、勉強を進めていく中で、さまざまなご質問・ご相談を受ける機会があります。そんなときに、「こんな風にやってみるといいですよ」といったことをいろいろアドバイスさせて頂いたりするわけですが、そのうちの一つとして、「仲間とゼミを組んでみること」があります。

 勉強を始めた当初は、皆さん、やる気に燃えまくっています。
こちらが近づいただけでアチチ・・・とやけどしそうな位で、
講義中に下手な冗談でもいおうものならにらんでくる方までいるほどです。

 でも、1年間は結構長い。

 最初のモチベーションを維持していくのはなかなか大変で、
自分なりに工夫をしていかなければなりません。

 その一つが、友人とのゼミ。ゼミを組むと、何がいいんでしょうか。もちろん、わからないところを教えあう、といったこともあるでしょう。でも、それ以上に、ゼミはモチベーションに維持に役立ってくれるのです。

 勉強をしていると、スランプが来る時期があります。

 何となくやる気が起こらない。原因がわからないが成績が伸びなくなってしまった。
これを乗り越えるのはけっこう骨が折れます。

 でも、ゼミを組んでいた場合。自分の調子が悪かろうが良かろうが、「これをやる」とみんなで決めたことはやらなければいけません。調子の悪い自分にみんながあわせてはくれないのです。(あわせてくれる場合もあるかもしれませんが、それはいいゼミではありません。)

 結果的に、自分の調子が悪くても、無理矢理引っ張られることになる。
自分だけおいていかれたら悔しいですからね。

 気が乗らないけど、ゼミでやることになっているから仕方なくやってみた。ゼミに参加して見たら、最初は気持ちが沈んでいたけど、みんなにあわせて発言しているうちに、気持ちが沈んでいたことを忘れてしまった・・・。

 そんなことを繰り返しているうちに、スランプは飛んでいってしまうのです。

 私自身も、受験時代、やる気にあふれた仲間たちとゼミを組んで勉強していました。そのほとんどが、今では司法試験に合格して、実務で活躍しています。彼ら・彼女たちとたまに偶然会ったり、実務でやりあったり、そんな機会があると、とても幸せに感じます。

 一緒につらい時期を乗り越えた仲間ですから。

 もっとも、ゼミはただ組みさえすればいい、というものではありません。

 いいゼミを作るためのポイント、を考えてみましょう。

1 目的をはっきりさせる
 そのゼミで、何を実現したいのか、自分一人ではできない何を達成しようとするのか、をはっきりさせる必要があります。この点がはっきりしていないと時によりゼミでやることが横道にそれ、時間を無駄にしてしまうことがあります。もちろん、目的は時期により変わっていってよいものですが。
2 厳しい人と組む
 おっかない人と組まなければならない、ということではありません。ゼミは、やると決めたことは必ずやる、という厳しさが必要です。「学校で課題が多く出ちゃってさぁ」「急なバイトが入っちゃって」といったときに、「そうかぁ」で済ませてはいけません。やると決めていたことをしてこなかった人に対しては、冷たい空気が走る、位がいいと思います。ぎすぎすした雰囲気がいいといっているわけではありません。念のため。
 普段は最高に仲がいい仲間です。でも、やることはやらなきゃね、です。
3 お互いを高めあう気持ちを持つ
 たまに、ゼミをやった後で、「○○は使えないよね、○○は最低」などと、参加者の批判をする人がいます。人の悪口を言いながらいい結果を出していった人は見たことがありません。
 仮に参加者の実力に差があったとしても、できる人はまだわかっていない人に説明をするなど、自分の力を高める方法はあるはずです(わかっていても、思ったように説明ができなくて、愕然としたりします。)。
 人をけなすのではなく、お互いにとってためになる方法を考えましょう。
4 時間を生かすことを意識する
 ゼミで勉強していると、わからないことが出てきて、誰も答えられない、といったケースがあります。そのようなときは割り切って、次回までに誰それが調べる、講師に質問してしまう、といったことにしましょう。
 時間の有効な活用を。
5 高めにハードルを設定する
 参加者の誰もが簡単にこなせるテーマをあつかったのでは、それなりの成果しか期待できません。量的に、あるいは内容的に、ちょっと厳しいよね、といったところにテーマを設定しましょう。
 今の司法試験にはありませんが、私の受験時代には、会計学が試験科目にあって、企業会計原則を一言一句正確に丸暗記する、というのをゼミでやったことがあります。てにをはを間違えただけで突っ込みを食らうのは大変でしたが、おかげでみんな一文字残らず、正確にいえるようになりました。
■ 本を読んだら行動する

 これはよくいわれるところですが、本を読んで「感動した」という人、セミナーを受けて「素晴らしかった」という人は多くいても、それを行動に移せる人はごくわずかだといいます。

 確かに、身の回りの結果を出している人たちを見ると、勉強も一生懸命されている一方、それを実践に生かすという姿勢の人が多いですね。机上の空論で終わらせないというか。

 読んだ、というだけで終わらせないためには、その本から受け取ることを制限する、という方法もあります。たくさんの情報を得ても何もしなければ意味がありません。そこで「この本から得られた最大のポイントはこれ。」というものを絞り込んで、それだけは実践に移すようにするのです。

 本は、1冊読み切ることが目的ではありません。

 そこで感じた感動を大切にするのであれば、あえてそれ以上は読まない、
という方法もあると思います。