弁護士千葉博コラム

1 法律に関するひとこと

■ 法律を嫌っていませんか

 よく、お金については、これを味方にするか敵にするかは自分の心がけ次第だ、
などと書いてあるのを目にします。
また、お金を汚いものと思っているとお金は貯まらない、などという人もいますね。

 法律も、基本的にこれと同じだと思います。

 これをどのように使うかで、味方になったり、敵になったりする。
また、いやなものだと思って毛嫌いしていると、これで痛い目にあったりする。

 法律自体に、善し悪しはありません(悪法、というのはあると思いますが)。
法律自体は単ある社会の決まりに過ぎません。
これをどのように使うか、自分がどのように接するかは自分次第です。

 そうであれば、自分の味方にしなければ損ですね。

 新しい法律ができた、法改正がなされた、などというニュースが毎日のように報道されますが、その論調に振り回されては行けないと思います。報道されているのは一般論。

 それが自分にとってどう影響するのか、自社がどのように影響を受けるのか、活用しうるものなのか否か。これは、その人の立ち位置・会社のスタンスによっても違って来ます。

 例えば、労働者派遣法が改正される、内容は規制を強化する方向だが例外が多くて実効性はないなどと報道されます。派遣会社にとっては、規制の強化ということで、ありがたくはないのかも知れません。でも、規制強化がなされることで、自社内の改革を進める原動力になるかも知れない。例外が多く認められるということで、その点を活用・研究して積極的な売り込みに使えるかも知れない。

 個人の場合もそうです。

 法律相談に来られたときには、時すでに遅く、「何でもっと早く来てくれなかったんですか」といいたくなるときもあります。法律的な話から目を背けないで、自分がどのような結論を望んでいるのか、そのためにはどのような法律があって、どのように使えるのか。それを考えている人といない人で、結果は大きく変わってしまうのです。

 法律はいやなもの、暗いもの、小難しいものではありません。
気になることがあったら、すぐに法律家にご相談を。

■ 法律相談に訪れる不思議な人たち

 弁護士として実務について16年が経ちました。

 その間、実務で多くのトラブルを抱えている人たちを見てきました。

 もうだめだと思われる苦しみの淵から、一緒に闘って、
見事に勝訴判決を得た思い出もたくさんあります。

 でも一方で、いくらアドバイスをしても、
自分で負けようとしているとしか思えない人がいることも事実です。

 「わかりました、Aさん、会社を相手に訴訟を提起しましょう。
  これだけ証拠があれば十分闘えますよ!」
 「そ、訴訟ですか、でも・・・。」
 「(おや、リアクションがいまいちだな。)費用的に問題があれば、
  法テラスで貸してもらうこともできますよ。」
 「そうですか。でも、裁判所に出向くというのはどうも・・・。」
 「大丈夫。普段の法廷に出向くのは弁護士だけで対応できます。
  Aさんにお越し頂くのは、本人尋問手続に入ったときくらいですし、
  そのときには十分予行演習もしましょう。」
 「そうですか。でも、訴訟って、何ヶ月もかかるんですよね。
  私にはそんな余裕は・・・。」
 「それなら、いまは、労働審判制度がありますから、
  通常は3回以下で手続が終わります。
  この手続でかなりの事件が解決しているんですよ。」
 「そうですか。じゃあ、家内と相談しましてまたご連絡します。」
 「・・・。」

 せっかく法律相談に来ていただいて、勝てる見込みがあり、その方が引っかかっていると思われる点を順々に取り除いていくのですが、ご本人がどうしても手続を進めることに「うん。」といってくれないのです。

 弁護士になったばかりのころは、「どうしてだろう?」と、ずいぶん考えたものです。
でも、顧問先や、事件で長くおつきあいしていく方々とお話しするようになって、
そのような方の気持ちがわかってきました。

 自分がそのような手続をとって、勝てるという自信がないんですね。

 そこで成果を挙げている自分がイメージできない。

 じゃあ何で法律相談?と思ってしまいますが、法律相談に来られる方の中には、
弁護士に「無理だ」とだめ出しをしてもらいに来ているとしか思えない方もいるんです。

 「無理」といってもらって、何もアクションを起こさない自分を正当化するんですね。
家族に「どうして?」と責められても、「弁護士もそういったから」ということになる。

 とてももったいないことだと思います。

 いざというときに、自分を信じる力があるかどうか。

 チャンスがあったら素直に掴む力があるかどうか。

 絶望の淵に落ち込まない自分が作れているか。

 仮に陥っても挫折しない自分をもっているかどうか。

 立ち直り方を知っている自分であるかどうか。

 こういったことがわかっている方とそうでない方とでは、
同じ状況におかれても、決定的な差がついてしまいます。